2018年9月22日土曜日

再び鈴鹿へ。 RS.TAKEDA GYMKHANA TEAM JAPAN


アールエスタケダのジムカーナチームのエースドライバー深川敬暢は、いま越えなければならない最後の壁の前で苦しんでいる。これは、その壁を前にしたものにしかわからない特別な苦難であろう。

人によってはその壁の存在にすら気づかないだろうし、気づかないでそのまま人生を終えたとしてもなんら問題ではない。多くのアスリートは自分で作った幾多の壁を乗り越え頂点を目指す。先に進めば進むほど壁は高く険しく感じるのかもしれない。

ジムカーナは一人で走り、一人で結果を出す競技だ。もちろんライバルよりも早いタイムを出すためにあの手この手と工夫を重ね、マシンとドライバーのシンクロ率を上げていく。出されたタイムを見ていると上位陣はほとんど同じようなタイムを記録し千分の何秒というような「僅差」で勝負が決まる。

しかし、この「僅差」というのは一般的な感性からくる言葉であり、トップトライアラーの世界には「僅差」などという概念は存在しない。私が敬愛し尊敬する日本を代表するジムカーナチャンピオン津川信次選手が、なかなか優勝を手にできなかった時期にアールエスタケダを訪れてくださったときにお話を聞く機会があった。

その時私は「0.025秒差で2位とは悔しいでしょうね、ほんとうに僅差だった」というような意味のことを話したところ、津川氏は「いや、ちょっとの差ではない。いつも千分の何秒の差で自分が負けてしまうのは何かが足りないから。その何かを見つけたくていろいろ試しているんです」

0.01秒のプライド~津川信次~

勝負は勝つか負けるかであり、真に強い選手は「僅差」で勝ち続けるのだ。

勝てないのは、単に勝てない理由があるから勝てないのだということを学ばせていただいた。そして津川氏はその後その「何か」を得て押しも押されもせぬチャンピオンとしてその名を全国に轟かせるトップ選手になった。


昨年深川が優勝を手にした全日本ジムカーナ鈴鹿ラウンドが今週末に迫っている。
今回のラウンドが「壁」なのかそうでないのかは私にはわからないが、好きな競技を好きな場所で思う存分できることは実に幸せなこと。そしてその壁の前に立てることは幸運以外の何物でもないのだと思うのだ。











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